ヴィオロンのため息 [すきなもの]
父の一周忌だと、届けものがあった。
もう一年が経とうとしているのだ。
急に家がどうなっているのか気になった。
事情をよく知ってる友だちに頼んで、観光客を装って
見にいくことにした。
春には桜が、そして牡丹、紫陽花。
秋は紅葉、冬は寒牡丹。
「花の寺」と宣伝されているこのお寺は
紅葉しきれていないこの時期でも、
多くの観光客が訪れていた。
家はこのお寺から徒歩1分。
家の前に立った。
門は錆びて、庭の木々もあまり手入れされてないようだった。
よい天気だというのに一階も二階も雨戸が閉められていて
人の気配は感じられなかった。
父と暮らしていたその人は、少し身体が弱いらしい。
入院でもされているのだろうか。
不謹慎だが、その人のことより、寂れていく家が気にかかった。
家の中に入り、二階にかけ登って
窓を開け放ちたい衝動にかられた。
そこからは少し紅葉し始めた境内が見えるはずだ。
そして、その窓から見える四季の移ろいを
当たり前のように見て過ごしてきた日々が
ひどく懐かしく思えてきた。
家を出てから、ここに戻って来たいと思ったことなど
一度としてなかったのに。
2011-11-11 11:33
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コメント(2)
今ころでしたか……。
1年、たたれたのですね……。
私も、旧宅を出てから、郵便を入れに行った時以外は、この2年半、敷地にすら入ってません。
はいりたいとも思わないけど、でも……。
徒歩2分くらいのところに佇んでいる、あの家が、なんとも複雑な存在であるのは、否定できないです。
by ミィシャ (2011-11-12 05:17)
ミイシャさん、ありがとうございます。
そう、複雑な存在!この言葉が適切な気がします。相続のことも含めて、早く確認しないといけないことがあるよと周りからは言われてはいるのですが…。お互い、重いグレーゾーンですよね。
by 月うさぎ (2011-11-12 22:08)